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2010-05-07

電子書籍は一体誰が恐れているのか(byコデラノブログ)に元書店員の立場からコメント

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確実にガクブルだわー

http://blog.livedoor.jp/nob_kodera/archives/2646750.html

以下抜粋およびコメント。

“僕が3年前に住んでいた小さな町は、駅ビルにも駅前にも小さな本屋があったが、完全に終わっていた。単に売りたい本を売っているだけの店である。すなわち各ジャンルのベストセラーを平積みし、大量の週刊誌をならべ、地図や学習ドリル、辞書など一通りのものがあるだけ。「本読み」の心を全く捉えない。”

言いたいことはよくわかる。でも、これは必ずしも「終わっている」とは言えない。
特に駅前立地であれば、顧客の絶対量として「話題の本や雑誌を求める(そして急いでいる)ライトユーザ」と「本好き」の比率で前者に大きく偏っている可能性が高いからだ。
また、ライトユーザと本好き向けの売り場を両立させるには売場面積が不足する場合が多い。
純粋に収益性の問題として、心を殺して「売れる本のみに注力」して「申し訳無いが本好きは他所のデカイ本屋行って下さい」せざるを得ない店というのは、ある。


“一方読み手は、本の内容が重要である。それがどの出版社から出ていようが、100%どうでもよい。おお、今回は角川から出たのかよしよし、などという読み手など居ない。それならば、多少背の高さはでこぼこになっても、内容別、ジャンル別、作家別でまとめてくれた方が助かる。”

これも必ずしもそうとは言えない。
文芸書や実用書には当てはまるかもしれないが、コミックや文庫、新書に関してはレーベル別で探す人も多くいる。
また、文芸書などで「ジャンル別」等の分け方をした場合、その文法は個々の顧客によって異なるケースも多々あり、その場合には逆に閲覧性を損ねる。
その辺を空気読んで「うまい使い分け」と「保険をかけた」売場作りをし、その上で「文脈棚」を作れるのが「できる書店員」だろう。

“実に古本屋の本の並べ方は、これなのである。出版社関係なしに集めるので、棚がぐしゃっとした感じになるが、面白い本に偶然巡り会う確率が非常に高い。”

「出会い」を演出するのは書店員の腕の見せ所だけど、「秩序を保った検索性」を維持するのもまた腕の見せ所。
「本好き」の魂で「本好き」だけに「面白い売り場でしょ」をアピールするのは自己満足。
(もちろん、それ自体がコンセプトになっているヴィレヴァンのようなニッチ対象店は別)


“今の本屋は、品揃えと見せ方の面で、ネットの検索性にも勝てず”

「今の本屋」と一括りにするのは、とても失礼な話だ。
ネット書店の「検索性」で、「書店の売り場」(別に池袋のジュンク堂とかだけじゃない。ごく一般的な、郊外型の大型書店と比べてもいい)に勝てるサイトが現状あるのだろうか?
ジャンル一覧やランキングを押すと、ブロック毎にずらずら並ぶだけ。申し訳程度に表示されるレコメンド。いくら頑張っても1画面に数作品しか訴求できない画面。何らかのアクションをしなければ、限定的なコンテンツしか見せられない設計……本屋の「平台」と「棚」に勝ってるサイトを僕は見た事が無い。


“Amazonや電子書籍に負けるのは当然であり、客に支持されない本屋は、淘汰されても仕方がないのではないか。これはどんな商売でも同じ事で、なぜ本屋だけが手厚い保護を受けなければならないのか”

本屋が淘汰されるのは然るべきだし、今でも「街の書店」は淘汰されまくってる。
版元がリアル書店を残したい理由は以下の2点だと思う。

・リアル書店とネット書店、電子書籍のユーザ層は異なる。ある程度のシフトはあっても、各々の販路と売上を維持したい。新しい展開は「販路を増やして売上を伸ばす為」であって、「既存モデルの置き換え」じゃない。つかそれ誰得。
・リアル書店は「購入動機」が無くても人が訪れる「プロモーションの場」だから。ショッピングモールに行くと、実は大して売れてない書店にも、雑誌コーナーで立ち読みしてる人は多くいる。たぶん、どんなテナントより「見かけ上は」繁盛してる。結果としてその場の購買に繋がらずとも、コンテンツのプロモーションという意味では存在意義がある

もちろん、これらの理由は「リアル書店を恐れて電子書籍に手を出さない」理由にはならない。
ただ、「版元として戦略的にリアル書店を保護し続ける必要性」はある、という事。


以上、ほとんど揚げ足取りの難癖なのですが、元書店員としてはどうしても言い返したかったので。
小寺さんなので、連載の続きには凄く期待してます。マジで。

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